論理的展開はやや強引
★★★☆☆
読み進めて行くとわかりますが、多段的論法を多用しているため、かえって根底に流れる思想が不明瞭になっている感があります。基本的な思想は大変有意義ですが、著者の論理に流されてしまう読者は、本来的に同様な思想に固執した者であるか、別の論理にも流されてしまうホッジャさんのような人物であろうと予想します。この本を読んで疑問を持つということは実現できても、疑問を持っている自分の考え方にまでは疑問を持つことができないので、思想本の領域を出ることができていないのではないかと感じます。ただし倹約という思想を考えるためのきっかけとしては有意義な内容であると思います。作者の論理に屈することなく著者と自己の論理に矛盾を見出すことができる読者には良書ではないでしょうか。著者がミハイルである可能性も期待しつつ倹約について真剣に考えて行きたいものです。
「平成版・日本永代蔵」に相当する名著
★★★★★
日本人として、また企業人として、感動した。目からウロコであった。
冒頭から、著者が繰り返し引用する、古の教えや、美しい言葉の数々。チェーホフの劇にある「安易な生活は清らかで有り得ない」。。。「感動は前進、満足は後退」。。。井原西鶴の「人は実あって、偽り多し。」など。著者は、こうした名言を織り交ぜ、昨今の潮流でもある「エネルギー・環境」というテーマを通じ、倹約の精神、幸福を感じることの大切さを語る。
日本人としても、企業人としても、この目線を忘れてはならないと思う。日々の企業経営で、コスト削減をすると品質が落ちる、だから削減は良くないという声を聞く。この度に、昔教わった、倹約の心を現場で説く日々。その理由は、経済学における「倹約のパラドックス」を人々が恐れるあまり、日々の倹約の心がおろそかにされるのを感じるからである。
安易な二律相半の議論が多い昨今、本書は、人類の持続性を諭す。まさに平成版・日本永代蔵ではないか。大変感動した。
「幸福の反対は安静」にうなずいてしまう
★★★★★
久しぶりに登場した新しい“ショートショート”新書版で、一寸手にとって、パラパラとめくると、どのページからでも引き込まれてしまう。
五話づつ六巻に分けられた主題は人間の生活にとって不可欠なキーワードで構成されている。
『人の心理』から始まり『哲学』までを古今の文学、思想を網羅して“ショートショート”仕立ての話で、読みやすい。
癌で闘病中の友人に差し入れたら、「どの話もなっとくが行く、手厚い介護で甘やかされたらたちまち鈍ってしまうもんね」と、例えば(ネタばらしのようでごめん)この話は第2巻の「ストレスは健康のもと」の中にある、筋肉ドクターの発言『幸福の反対は安静です』という発言に頷いてしまう僕も同感です。