この本に書いてあることが、必ずしも正しいというわけではないだろうが、その解明過程はまるでミステリー小説のようで、読んでいてぐいぐい引き込まれる。学術的な内容でありながら、決して難解ではなく、むしろ読みやすい。ヒトデやウニといった身近なものへの疑問の追求から、最終的には、ノーベル化学賞を受賞した炭素構造の、フラーレンC60にまで話は発展する。真理は身近なところに転がっているのだ。しかし何よりも驚くのが、著者の研究に対する情熱の深さだ。疑問が浮かぶと仮説をたて、図書館でひたすら調査する。得られた結果をありとあらゆる方向から検討し、新たな展望をたてる。確かに真理は身近に転がっているが、それを発見し、暖め、羽化させるのは並大抵のことではないのだ。
実際、身近なところに疑問や謎はいくつでも転がっているのです。それを見つけなおして、謎を解き進むことがもう「研究」だと思います。大学の研究室に属していなくても、誰でも研究ができます。それが何であれ、何年もかかって一つのことをやりとげることは素晴らしいという、人生の指南書でもあると思います。