証券投資を正統的に解説した良書
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本書は,1996年に発行された書籍であるが,普遍的な内容が語られているために色褪せることは無い。この時代は,まさにバブル後の長期不況の中にあり,バブル不況の脱出を如何になすかが大きな焦点となっていた。
構成として第一章では,バブル生成と崩壊の過程を示し,第二章以降第五章まで,証券投資の理論とその現実的問題点を指摘している。第六章〜第七章にかけて,理論に照らし合わせて当時の日本の状況を分析し,第八章でその改善方法を提言している。
ファイナンスの知識の無い人に対して証券投資論をきちんと説明し,それを基に提言を行うという正統的な教育・啓蒙書であり,かなり論理的にまとまった良心的な書籍である。
巻末には簡単な用語集も添えられており,読者の理解を助けている。
筆者の経歴を見ると,東大経済学部を卒業後に長年,保険業務や信託銀行での実務を経験し,東京工業大学での非常勤講師も勤めている。教科書のような書き方になっていることも,うなずけるというものであろう。