プーチン不在のプーチン入門
★★★☆☆
2000年1月、前年大晦日のエリツィン大統領の辞任に伴い大統領代行に就任したプーチン。
それから10年後、彼は大統領の任期終了後も首相として国内外で存在感を示している。
本書はゴルバチョフのソ連共産党書記長就任からプーチン政権誕生までの、
ソ連解体後のロシア連邦の政治状況を概観するものである。
プーチンを軸としたロシア政治というわけでも、プーチンのエピソード満載というわけでもない。
それには本書執筆の2003年時点でプーチンが1期目の任期途中であったこともあるが、
プーチンは「自ら大統領になったのではなく、大統領に仕立てられた」「小粒」であるとの著者の評価も大きい。
そのため本書ではプーチン個人よりも、プーチン登場の下地を作った前任者のエリツィンや
両者の取り巻き、とりわけ「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥へ紙幅を費やしているのである。
上述の様に本書は2008年まで大統領職にあったプーチンのほんの一部しか描いていない。
その内容でさえ、他のプーチンに関する書籍を読んでいれば、目新しいものは殆ど無いのである。
おそらく本書の今日的意義は、プーチン大統領誕生までの10年間の概観というところであろう。
プーチンとロシアを知りたいなら
★★★★★
プーチンとロシアの事を知りたいなら、DVD「暗殺・リトビネンコ事件」をご覧になった方が良いでしょう。
ソ連からロシアへの歴史
★★★★☆
先日、大統領をやめ、首相に就任したプーチン。
実際にはプーチンによる支配は、これまでとかわらず続くのであろうが、
一体、この人はどんな人なんだろうという興味から手に取ってみたが、
内容はとても分かりやすく面白い内容だった。
単にプーチンの生い立ちから大統領になるまでを描いているだけでなく。
ソ連崩壊から現在のロシアが成立するまでの経過が分かりやすくまとまっていて、
オリガルヒの存在などロシア経済の基礎についても知ることができた気がする。
日本から見たロシアは、いまだに分からないことが多いが、
よく知ろうと思うきっかけになった。
中学3年生の時の憧れを実現させた男
★★★★★
プーチンは,中学3年のとき,レニングラードのKGB支部を訪れ,「ここで働きたい」と申し出たという。スパイ映画「盾と剣」に熱中して,「一人の諜報員が千人の運命を決めるといったシナリオに感動した」ためである。
応対した職員は,KGBでは志願者は採用していないこと,兵役を終えるか大学を卒業しない者は採用していないことを告げた。
プーチンはこれを聞いて猛勉強した結果,レニングラード大学法学部を卒業し,KGBから誘いを受けることができた。
その後,一時KGBを離れて,サンクトペテルブルクの第一副市長などを務めた後,中央政界に誘われ,FSB(連邦保安局。KGBの国内部門)長官に就任した。その地位でエリツィンに忠誠を誓い,ファミリー(寡占資本家らによる側近グループ)のメガネに適って大統領まで上り詰めた。
祖父はコック,父は工場労働者という出身では,ソ連の崩壊といった幸運がなければ,大統領になるということは想像もできなかったであろう。しかし,プーチンが大統領になったのは,そうした幸運のみならず,鉄の意志を持ち続け,精進を重ねることを怠らなかったというところにも大きく負うはずである。
「プーチン」というタイトルではあるが,本書が取り扱うのはプーチンその人に限定されず,ゴルバチョフ登場以降のロシア(ソ連)史が要領よくまとめられている。
文章も読みやすいので,広く一読を勧めたい。
大統領交代期における政経界の抗争
★★★★☆
プーチンがなぜ大統領になれたかを述べている現代ロシアの入門書。
ソビエト崩壊から、第一期プーチン政権までの期間に行なわれた政財界の大物が繰り広げた主導権争い。
度重なる首相交代劇、大統領を中心とした政治家同士の抗争、混乱期に富を得たビジネスマンの暗躍などについて分かりやすく説明している。
ただ、混乱の犠牲になった一般市民、日本でも報道されるマフィア、地方の動向などはこれといって書かれていない。
あくまでモスクワの大統領府中心に興味がある人向きで、流れを理解するのに適切な一冊。
まずこの本を読んでメインキャスト名と職業内容を理解してから、専門書を読まれることを薦めます。