アメリカを超えるヨーロッパに注目。
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イラク戦争以降、ヨーロッパ、とりわけ独仏に注目するようになった。ところがこの本で面白かったのは、当たり前だがヨーロッパはひとつではないということ。ヨーロッパ大国とは別の価値観を持った国々が、時にアメリカを支持し、時に欧州をダブルスタンダードと非難する。その多様性がヨーロッパの健全さを形作っているのだと思う。
一つ一つの章が、認識をくつがえしてくれる。そのようなヨーロッパ、多様でかつ結束したヨーロッパの、政治・経済、アイデンティティ、モラルがアメリカにならび、しのぐ、と本書はいう。特にソラナペーパー(安全保障戦略)と、ワイダー・ヨーロッパという、アメリカを意識したヨーロッパ戦略に関心を持った。貧困への対処、人権、安定と発展を基礎とするEUにもっと頑張ってほしい。
動的なEU
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これまでのEUに関する著作はフランス、ドイツなど大国の視点を軸にしたものが多かったが、本著はチェコやハンガリー、ポーランドなどといった周辺、新加盟国に焦点をあて加盟要求までの歴史的経緯や加盟基準を満たすために伴う右翼政党の躍進などを詳細に記述している。またEU拡大に伴うロシアとの関係や国内、国外マイノリティの権利などにも焦点が当てられており、狭から広まで扱われているバランスの取れた著作である。
現在のEUのみならずヨーロッパ統合までの経緯やアメリカやアジアとの関係、またEUの将来の展望に関心のある方はぜひ一読してもらいたい。
ひとつの、多元的ヨーロッパの衝撃
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ヨーロッパの統一がどういう意味を持つのか知りたくて購入した。国際経済だけでなく、政治的にもアメリカに物申せる欧州のパワーは、いまやヨーロッパなのだと納得した。
特に面白かったのは、ヨーロッパの境界線という考え方。拡大がかえって東のロシアや南の中東とぶつかり、「どこまでがヨーロッパか」という新たな緊張を生んでいるのには考えさせられた。
拡大ヨーロッパとアジアを読むと、今、世界が地域統合の流れの中にあるということを実感し、日本も地域協力を真剣に考えなければと思う。一気に読めて、欧州のエネルギーを体感した。ためになる本です。