出版のレベル
★★☆☆☆
著者は建築家・建築学者。大阪万博などで仕事をしたという。
一方で、旺盛な執筆活動を行っており、日本人論、日本文化論に関する著作が多いようだ。私は四半世紀以上前に書かれた『橋と日本人』しか読んでいなかったのだが、本書を読んでビックリした。そのあまりの粗雑さにである。
本書は、庭を通して日本人の心を探るといったテーマなのだが、自分の思いつきを並べただけで、きわめていい加減な仕事であった。論拠を示すこともなければ、話も飛びまくるので、まったく付いていけない。説得力というものが感じられなかった。
これは出版すべきレベルにはないのではないか。
少なくとも、日本の庭について知りたいのなら、もっと別のちゃんとした本にあたるべきだろう。
着想は卓抜だが…。
★★★★☆
これは庭園紹介の本ではない。それは一葉の写真すらないことからも明瞭だ。庭園「論」なのである。
日本の庭の根源的意味を著者一流のヒラメキから語っている。日本の庭とは齋庭(ゆにわ)、神を迎える場であったことを多くの現代人は忘れているが、著者はそのことに喚起を促しているのである。先行レビューは帯にある「なぜ庭にこんなに惹かれるのか」という惹句に頸をかしげておられるが、その答えは本書のなかにあるといえよう。
しかし、話の展開にあまり説得力が感じられないのが玉に瑕。ヒラメキのオンパレードで、論証的なくだりになると頸をかしげたくなることが多かった。著者は元教授とのことだが、むしろ教祖的(?)性向の持ち主ではないかと思われた。
*なお、神の庭としての自然に関心のある向きには野本寛一著『神と自然の景観論 信仰環境を読む』 (講談社学術文庫)の併読をお勧めしたい。
帯と内容の差がつらかったです。
★★★☆☆
「庭と日本人」という新書を「なぜ、これほど京都の庭に惹かれるか」という帯につられて買ったところ、日本人の魂→庭の話が展開されていて、少し裏切られた気持ちになりました。内容的にはすごく教養と知識のある作者が、お酒の席で雑学をお話くださっているような感じで決して面白くないわけではなく、むしろとても勉強になったのですが、この「裏切られた感」が残ってしまいました。でも、決して作者のせいではありません。出版社のせいだと思います。星が3つの理由は日本人論の専門外の人間が読むには、話が系統立ってなく、雑学的に飛びすぎたところです。内容的には、とても深い興味のあるものがちりばめられていたと思います。「なぜ京都の庭なのか」という問に対する答え以外には。