著者は女性生命科学者であり、長く不治の病との闘病生活を余儀なくされたという自らの経験と、その思考過程の結果から、我々の「自己」とは、36億年間をかけて進化しつづけてきた、DNAそのものであると主張する。
又、原始生物から、様々に枝分かれした進化の道筋を辿った生物の中でも、人類がその進化の先端にあり、愛や感動という感情を持ち、又、神の存在を意識するに至ったのは、「脳」の発達によるものであること、しかも、その「脳」の中には、未だ脳が未発達であった太古の昔の、「意識」が今も記録されているという。
美しく上品な小説の形をとっているが、本書に述べられたのは、科学者としての著者の、宇宙とは、人間の存在とはという根本的疑問に対する解答である。
遺伝子の中に、全ての生命体の設計図が記されていることは、既に、科学的に証明されている。しかし、「何故」そのような複雑なメカニズムが出来たのだろうか。やはり、そのメカニズムを作った「神」という存在があるのだろうかという疑問に対しても、本書は解答を与えていると思う。