良くまとまってはいるのだけれど.....
★★★☆☆
本書では、1945年から現代までの状況を国家間の外交システム、労働、福祉(教育)、生産力などそれぞれの視点から歴史的にまとめ直し、さらに2025年までの中期的な見通しを概観している。その基本となるのはコンドラチェフの波動論(これって景気の波動を示すものだけだと思ってたんだけど、実はもっとマクロ的視点を含んだものみたいね)であり、これをもってすると上昇波動が1968~73年をひとつのピークとして下降に転じたとされている。
各章にかかれていることは、とてもよくまとまっていて、ずうっと『現在』という枠の中でとらえてきた(見過ごしてきた)ことが、歴史的史観をもって整理されるとへええ、そうなんだ、と改めて認識できる。
具体的に面白かった点としては、グローバルな視点から現在を見た時、各地域で切り離せないのが宗教的原理主義だと思うけれど、これについては「宗教的原理主義は反体制勢力には違いないが、解放運動とは言い難い。単に開発至上国家主義者の価値観と社会基盤を別の定型に成形し直そうとしているだけ。」とされている。全く賛成。しかし、現在のイラク問題、さらに拡大解釈をして捉えた「NATO対イスラム原理主義」の場合を考えてみる。最後の方に、ヴィエトナム戦争時の「ニクソンはすでに世界システムにアメリカが露骨な軍事介入をすることの限界を悟りつつあった。」と書かれているのだけれど、おい、ブッシュ、あなた30年遅れてないかい?!と思っちゃうね。
面白く読めるのだけど、あくまでも総括的な概論にしか過ぎない、ともいえます。最後の「概観」の章がもっと書き込まれたものであったらな、と思いました。