Hazel
価格: ¥1,408
本物のアヴァンギャルドのロッカーというものは世界一忍耐強い人間でなければならない。彼らの作るアルバム(リリースできたらの話だが)はすぐに埋もれてしまいがちで、誰かが気づいてくれるまで10年以上も待たなければならないのだ。レッド・クレイオラ(90年代半ばにアルバムを2枚、ドーナツ盤を1枚、シングルを2枚出している)の復活――30年に及ぶキャリア中たった2度目――は、誰かが気づいたときに起こった。サーティーンス・フロアー・エレヴェーターズのような他の無名バンド同様、60年代後期のテキサス・サイケデリック・シーンから生まれたレッド・クレイオラは、1966年から67年にかけて、毎回抽象度が上がっていく一連のレコードを作った。その後は再びほとんど消えてしまったも同然だったが、70年代後期になって、このとき唯一残っていたメンバーのメイヨ・トンプソンが、ペレ・ウブ、スウェル・マップス、エックスレイ・スペックスなどのメンバーを含むダダイズト/スクロンカーの新世代をフィーチャーした一連のレッド・クレイオラ・レコードを引っさげてイギリスで再浮上した。ここでまたもや深い闇の中に沈み込んだトンプソンは、シカゴのアヴァンギャルド・ロッカー、ジョン・マッケンタイア(トータス)、ジム・オルーク、デヴィッド・グラブス(共にガスター・デル・ソル)らと組んで『Hazel』で再び日の目を見た。多分数には力があるのだろう。『Hazel』は15人のキャストを使って、トンプソンがこれまで手がけたメロディとリズム、それに実験的手法を組み合わせたもののうちで最も成功したものとなった。過去のレッド・クレイオラの作品がイライラするほどに耳障りで不明瞭だったのに対して、『Hazel』は不可解さ(Boogie)よりもとっつきやすさ(I'm So Blase)に重点を置いている。角張った不協和音的特質も健在だが、牧歌的でロック調で、ファンキーなところまで表れている。せいぜいAnother Song, Another Satanのような曲は、自由形式の抽象性とつくりの良い曲の間を楽々と行き来して、複雑性を犠牲にすることなく聴きやすいものになっている。 --Roni Sarig