Sessions 2000
価格: ¥1,285
30年近く前のデビュー作『Oxygene』以来、ジャン・ミッシェル・ジャールの音楽はかなり予想しやすいものだった。1984年の有名な『Zoolook』を除き、彼はエレクトロニックなスペース・サウンドをひたすら作りつづけてきた。けれども、それを本作に求めてはいけない。むしろジャールはアンビエントなエレクトロニカの独特な音楽に入りこみ、ドラムのループやグルーブを用いてポストモダンなエレクトロジャズ・ノアールを生みだしている。彼の子ども時代の音楽にまつわる一番最初の記憶は、前衛的なトランペッターだったドン・チェリーなどのジャズ・ミュージシャンの膝の上に座っていたことだ。その影響が本作の物憂げでエレクトロニックな即興演奏のなかに現われている。ジャールは『ブレードランナー』の街のサイバーナイトクラブで、ハモンドB3オルガンやジャズのヴァイブレーション、ミュートしたトランペット、アップライトベースの模範的な演奏を聴かせてくれる。だが、このシンセサイザー奏者の即興演奏には生気が感じられず、ジャズセッションは、エレクトロニックなノイズがのたうち、無関係なロボット音声がたまに飛びだしたりして、ただあてもなくさまよっている。本作は尊敬されてきたシンセサイザー奏者の大胆な変身ではあるが、冷静な音楽とふらふらした音楽とでは差があるのも確かだ。(John Diliberto, Amazon.com)