場の共生による新しい文化創造:柳生新陰流における生命循環
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生命知として提唱される人間と自然の目に見えぬ循環。古武道における剣と心、身体と場の働きを「共創の場」として捉え、そこに生命循環から救済への究極の知恵を見る。
柳生新陰流は、とりわけ徳川将軍家の剣法指南として「剣術の王道」とされた傑出した武道。宮本武蔵の「殺人刀」とは対極にある「活人剣」を基本理念にしており、そこには日本古来からの武術と、中世以降の禅に倣った「道」としての「武」の極意が集約されている。
清水博氏の生命科学者として研究は、生命を分子のレベルから解明する最先端の分野だが、実は科学の領域に止まらず、哲学や仏教思想と結びつけて、いかに生命が活き活きとして共生できる文化を生みうるか、にまで及ぶ。同著の結論として、日本の伝統的な共生理念に立脚した「場の文化」による新しい文明を創造することを提唱している。