1986年のリリース時には死者を冒とくする悪どい金儲けとして叩かれまくった本作だが、その実体はそう単純なものではない。ここに並んだ10トラックは、要するに1974～75年のスタジオ・セッションからのアウトテイクなのだが、なかなかに聴きごたえがあるし、舌を巻く部分もいくつかある。

   もっともアルバム『Rock 'N' Roll』のために録音された5曲はひどい。このやる気のなさそうな「Angel Baby」や「To Know Her Is to Love Her」が結局アルバムに収録されなかったのは当然だろう。また、ジョンが自身によるリリースを見送り、ジョニー・ウィンターに譲った「Rock and Roll People」にも同じことが言える。

   だが、後半は素晴らしい。アルバム『Walls and Bridges』（邦題『心の壁、愛の橋』）からの5曲を「公式バージョン」のオーバー・プロデュース地獄から救い上げている。もはや至高と言っていいほどの仕上がりだ。『Walls and Bridges』に不満を持つ熱烈なレノン教徒にはおすすめの1枚だ。それ以外の人は手を出さない方が無難かもしれない。（Dan Epstein, Amazon.com）