作者が子供のころから細切れにきいていた母の育った満州での暮らしと戦争を、史料や母の記憶から再構成して語り直されている。物語は母の娘の視点から語られており、途中にその娘と母たちの現代のシーンが挿入されて、重層的な語り口となっている。
特に、今はもうその制度すらなくなってしまった芸妓の生活が描かれているのは珍しい。しかも満州である。戦後なかなか引き上げることが出来ずに、そして引き上げてきてからも初めての日本でしかも一文無しの状態で暮らさねばならなかった様子などもリアルだ。
今や忘れ去られようとしている戦前戦!!後の、しかもことさらに忘れさられがちな満州での日本人の記憶をこうして漫画に残したことの功績は非常に大きい。作者がこれを書き終わってみてホッとしたというのもうなずける。竹宮の作品の中でもとりわけ傑作だ。