といっても、オレが物心ついたときには既に保護センターに飼育されているものしかいなかったのだった。イロイロ考えてしまうことは多いのだが、これほど大きくて美しい鳥があそこまで数を減らしてしまうまで、何の対策もとられなかったというのはなぜなのだろう。そりゃ、みんなそれが自分の仕事だなんて考えなかったからなんだろう。どの程度まで普通に、過去の日本の世界にこの鳥は存在していたのか。アメリカのリョコウバトもあれほど大量にいたのに絶滅してしまったわけで、大部分の人にとって動物たちが絶滅しようが何だろうがどうでもいいことなのだろうか。だから、それが自分の仕事だなんて誰も考えなかっただけの話なんだろう。オレだって、それが自分の仕事だとは思わないだろうし、まさか動物の絶滅がそれほど近くに当たり前のように存在している出来事だなんて、考えるはずもないのだろう。
だからこそ、こんな人がいたと知るだけでもこの本を読む価値はあるのだ。朱鷺の美しい姿を見れば生存させていきたいと願うのは全く自然なことだが、実際にこれだけのことをするのは並大抵のことではないのだから。