本作でソロをとっているボーイソプラノのコナー・バロウズは1983年生まれ。10歳でコンサートデビューし、セント・ポール大聖堂の聖歌隊で1991年から96年まで活躍した。その至純な声はデビューしてまもなくセンセーションを巻き起こし、欧米の人々の記憶に強く焼きついているという。
本ディスクを一聴してみれば、だれもがコナーの声の天上的な美しさにイチコロで参ってしまうだろう。まさに神様からの贈り物、天からの恩寵(おんちょう)としか思えないほどの、永遠的な響きをコナーの声は持っている。
しかもテーマをレクイエム(死者のためのミサ)として、古今のレクイエムの名曲からのオムニバスとしているところが、企画としても秀逸である。シンセサイザーによるシンプルなアレンジにも好感が持てる。
ボーイソプラノの声は、どんなに美しくともいつか失われる。少年が青年に生まれ変わるまでのほんの短い間の貴重な輝きなのだ。しかし、このレコーディングによって、“20世紀最後の天才ボーイソプラノ”としての名声をほしいがままにしたコナー・バロウズの全盛期(すなわち声変わりの直前)の声をいまも聴くことができるのは、実にありがたいことと言わなければいけない。(林田直樹)