少し気になったのは,固定資産税を未実現キャピタルゲイン課税と解釈しているところである.そうするなら,不動産の未実現キャピタルロス(含み損)の損益通算を認めないと整合性が取れないような気がする.含み損のある住宅のローンを抱えている人にとっては,そうしてもらわないと納得しにくいのでは?しかし,このようにして固定資産税率を上げると不動産の市況によって税収が著しく変動するというリスクが生じる.私の素人考えでは,インカムゲインを得るための社会インフラ使用料が固定資産税と解釈しているのだが.
また168ページで,「レーガン税制改革以降,米国の開業率はつねに10%台の高水準で推移しており,....」とあるが,それ以前の開業率が示されていないので,比較ができない.この点を改訂すべきである.
この本で評価できるのは、日本の税制を分かりやすく説明していることと、
その問題点を解消するために、
あるべき改革の具体案を提示している点にある。
また、消費税と年金制度を絡めて論じるなど、
現在進行形の問題がスンナリと頭に入ってくる構成になっている。
改革案では、
前作で分かりにくく技術的な提案だった「サラリーマン法人」に比べて、
「支出税中心の税制に改革を」と税制全体の改革を提案したのは、
格段に分かりやすくなった。
政策には統一した理念が必要という筆者の考え方には、
賛同する人が多いだろう。
今夏の参院選では、
どれだけの政党が「統一した理念」に基づく政策を打ち出せるのか、
期待を込めて注目したい。