映画にすれば超B級映画か?
★★★★☆
若き谷崎潤一郎の作品で、ストーリーの展開に惹かれて、読み出すと止まらない面白さがある。ただ、文豪谷崎にしては、けれんみが多くかなり通俗的である。
質屋の奉公人真助が店の一人娘お艶と雪が降りしきる深夜に駆け落ちするところから物語は始まる。
運命を賭けた駆け落ちは本意通りにはならず、冷酷で残忍な罠が待ち受けていた。
自分を守るために殺人を犯してしまった新助は、自首することを決意するが、勝気でエキセントリックなお艶に振り回されてきっかけを失い、ますます運命が狂わされていく。
谷崎29歳の作品で、この半年後に結婚している。そのこととは関係ないだろうが、谷崎にしてはディティールが粗い反面、溌剌とした感じも受ける。悪女に跪く女性崇拝は谷崎文学には多く見られるが、この後10年作られる「痴人の愛」を連想させる。
北野武かタランティーノが映画にすれば、エンターテイメントで超B級な映画になるかもしれない。