一つの頂点
★★★★★
オーブリー&マチュリンシリーズの一つの頂点といえる本作。
多少学者くささが鼻についた一巻、素人っぽい叙述が退屈だった二巻、
それにくらべてこの三巻は明らかにレベルアップし、
読者を楽しませようとするオブライエンの「作家魂」が見える。
上下巻の二分冊だが、
上巻の見所は後半の嵐のシーン。
著者特有の細かくも読ませる描写で、
圧倒的な自然の猛威を味合わせてくれる。
また、スティーブンが拾ってくるナマケモノのエピソードも笑わせてくれる。
登場人物たちも魅力的で、
特使のファーカーや主計長のバウズなど
サブキャラですら愛してしまう確かな人物造詣は
シリーズ中でも屈指のできといえるだろう。
下巻では、
インドでの出会いと別れ、
商船団を率いての大海戦も用意され、
まさに大盤振る舞いな本作。
絶対に読む価値があると断言できる。