アイルランドを違った視点から見たい方に。
★★★★☆
政治的視点、日常的視点といった様々な視点から、著者が感じたアイルランドの一面を描いておられます。アイルランドを知っている方でも、全く知らない方でもアイルランドの”空気”を少し感じ取れる本だと思います。政治、歴史、経済、文化、人、など、トピックは多様。アイルランドの感じ方の一つとして、手にとってみてはいかがですか?
アイルランド今を知るための良書
★★★☆☆
アイルランドにとって米国は、英国の圧政と飢饉から逃れた人々の受入国であった。米国に渡った人は累計700万人、アイルランド系の米国人は一説によると3,500万人になるという。米国大統領となったJ.F.ケネディをはじめ、あらゆる分野にアイルランド系の人がいて、著者はその名前を羅列して興味深い。
一方、英国は12世紀以来、800年にわたってアイルランドを植民地化し、そのうち120年間は併合した。アイルランドの独立は1922年である。この辺りの経緯を著者は要領よく説明してくれる。
ところで、アイルランドの人口は、ジャガイモの導入によって英国の植民地化による収奪にも関わらず、1800年代中葉には800万人以上に増加した。その後、ジャガイモ大飢饉と米国等への移民により人口が著減した。現在は400万人強(北アを除く)に回復したに過ぎない。近年のアイルランドの「ケルトの虎」ともいわれる経済発展は、外資優遇策による主に友好的な米国企業の誘致とEUへの加入にあることを知った。しかし、経済発展にも関わらず人口が回復しない理由、また、人口の基盤となる農業(食糧生産)について知りたいところであるが、本書で触れていないのは残念である。
日本のアイルランドへの関心は明治以来、極めて高いが、本書で日韓関係を英国・アイルランド関係に擬して何度も触れているのが気になった。日本はロシアの脅威のもとに朝鮮を保護国化(併合は36年間)せざるを得なかったが、英国にとって日本のロシアに相当する脅威がアイルランドの背後にあったのだろうか?スペインなどが挙げられているが、それは800年にわたる統治の限られた時代に過ぎないのではないか?
著者の林氏は今年2月、駐英特命全権大使に任命されたようだ。『英国から見たアイルランドの現在』、『「ケルトの虎」の現在』などをテーマにした続編を期待したい。
アイルランドのことが存分に分かります。
★★★★☆
日本ではアイルランドのことに触れることはあまりなく、その存在自体もはるか遠い国のこととしか思われていません。
ところがアメリカ映画を見てみると、アイリッシュ系といったことをよく耳にすることがあったり、名立たる著名な人物にアイリッシュというのも聴き、歴代の大統領がアイルランド首相を迎えるというのも聴いたことがありました。
しかしながら、日本から見てみると、そのうわべのちょこっとしたところしか知らず、本書との出会いはアイルランドをよく知ってみたいという欲求を満たすものです。
アメリカとの関係、遡ってイングランドとの歴史的な関係を深く掘り下げて書かれています。
メインは、宗教的な宗派対立により、イングランドに植民地化されてきた長い歴史を詳述し物語っています。
タイトルのごとく”アイルランドを知れば日本がわかる”というのは、英愛(イングランド-アイルランド)関係より、日韓関係の類似的な関連付けをしようとしていますが、そのことはあまりにも押し付けのような気がします。
本書により、深くアイルランドの現在の政治経済と過去の歴史を存分に知ることはできますが、それと日本とが類似しているというのは持論であり言いすぎだと思います。
本書にも登場してくる”ONCE ダブリンの街角で”の映画は、空はいつも曇っているのですが、何か親近感がわいてくるハートフルコミュニケーションがこころに響きわたってくるのを感じました。
そういう、”愛”のあるとってもきもちのあたたかい国であることを望みます。
薄い内容でがっかりしました。
★☆☆☆☆
アイルランド旅行の事前準備のために購入しました。
当地の文化、歴史、風土等に関して基礎知識を得られれば、旅の楽しみを倍加させれれるのではないかと。
かりにも日本国の駐アイルランド大使だっ著者なので、かなり期待していたのですが、内容は薄く、本書を通じてなにを表現したいのか伝わってきませんした。書かれている中身は、一般個人のブログや雑誌広告に添えられている随筆程度のものでしかありません。
大使といっても、所詮はアイルランドを研究してきた専門家ではないので、仕方ないのかもしれませんが残念です。
知らない国だったアイルランド。
★★★★☆
知っているようで、知らない国アイルランドが非常によく解った。
北アイルランド紛争なども、この一冊でよく理解できた。
イギリス植民地から独立まで800年も続いた戦いの歴史が育んだアイリッシュ魂を、ビートルズからオバマまで多彩なエピソードなどちりばめながら、面白く語っているから最後のページまで厭きさせない。
国が貧しく、イギリスからの圧制も重なって、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど世界中に移民したアイルランド人達が辿った運命が、ユダヤ人達が辿った運命と重なって観えてきてしまった。
世界に広がった民族同士のネットワークが、今のアイルランドの躍進につながったと考えることが出来るのではないだろうか。
ただ、著者がイギリスとの関係を、日韓関係にも参考に出来るのではないかと何度も繰り返し本書の中で提言しているのだが、”そんなにうまく行くかなー?”と私の心の中に疑問として残ってしまった。