けれども、そうしたベテランたちとのパフォーマンスばかりではない。そもそもジュールズの番組はいつだって新人やカルト的なアーティストにも手をさし伸べてきたのだ。新進のジャズボーカリスト、ノラ・ジョーンズはニーナ・シモンの名曲<2>のカヴァーで、インディーズ出身の常連バッドリー・ドローン・ボーイとともに顔を出している。そのバッドリー・ドローン・ボーイは自作<11>でひときわ輝きを放っている。このナンバーにジュールズは、バカラック風のトランペットと陽気なピアノのメロディのイージーリスニング的なアレンジを加え、彼の最近の特徴であるシンプルではあるが雄大なサウンドを聴かせてくれる。さらに、ファン・ラヴィン・クリミナルズのカリスマ的魅力の持ち主ヒューイはシナトラのスタンダードナンバー<10>を歌い、ビッグバンド編成の甘いメロディーにぴったりはまっている。深夜音楽番組のファンにとって夢のジャム・セッション(「おい、ボトルに酒はあるかい?」とジョークを飛ばしているヒューイの姿が想像できる)に思える本作は、ビッグ・バンドのファンなら老いも若きも問わず必須の1枚と言えよう。(Caroline Butler, Amazon.co.uk)