現実世界と異世界のつながりが曖昧
★★★☆☆
・この作品は、異世界での冒険については非常によく描かれており
仲間とともに苦難を乗り越える姿に感銘をうけます。
・ただ、難点としては、現実世界と、異世界のつながりが的確に
考えられていない点が、最後釈然としない後味を残します。
異世界での冒険の結果が、どう現実世界への影響をあたえたのか
どういうつながりになっているのか、そこが適当にごまかされているため
現実世界の意味合いが薄れているように感じてしまいました。
・梨木果歩さんの裏庭は、異世界に旅立つ前の状態、異世界から戻った後の
現実世界のつながりが明確につながり、かつ人の心がつなげられ、だからこそ
異世界の旅が意味があり、かつ現実世界もまた意味があるという一貫性がありました。
この作品には、私も個人的に大きな支えを貰いましたが、裏庭を読んだ後となっては、
それと客観的に比較すると大きな差があるように思います。
本を読んだあとで見た映画の違和感も大きかったです。
あの家族崩壊の現実世界の内容から、異世界の冒険につなげる話が、
アニメ映画として、なんとも微妙だと感じました。
流石宮部みゆき!と思わされる作品
★★★★★
イヤ、相変わらず宮部作品は面白い!子供の視点からの作品ですが、年齢に関係なく読み応えがあると思います。
夫婦は元は他人ですから別れるのもある意味勝手なのかも知れませんが、犠牲になるのはやはり子供ですよね。私は亘の父親の身勝手な理屈にはかなり腹が立ちます。そもそも結婚当初から問題があるのでは?何か二股かけたみたいですが?何か冷たさのみしか感じませんでした。理論じゃなくて彼の言っていることは、単なるみっともない自己弁護。だから最後に亘が出した答えは正解だと思います。一度壊れてしまった家族は二度とは元と同じようには戻れないと思うので。より素敵な義父に巡り会えるかも知れませんし、ね。
ワタルとミツルの対比はなかなか興味深かった。
正直、人生は不平等で残酷なものです。でも人間は所詮自分に与えられた人生を、精一杯一生懸命に生きていかざるを得ないんですよね…。タイトルのように一歩一歩勇気を持って。もし間違えることがあっても、またそこからやり直していけば良いんです。艱難辛苦汝を玉にす…という言葉もありますしね。ミツルのようにその艱難辛苦の闇に呑まれてしまわないように…。
素敵なお話でした。
良くも悪くもなく
★★★☆☆
普通の少年を主人公としたファンタジーノベル。現実を反映しているという「幻界」への冒険。現実世界の少年がファンタジー世界で苦悩し成長していくという少年冒険モノの王道。
最初の方を読めば最後まで予想できますが、最後までその予想を裏切らないきわめてストレートなストーリー展開。悪くはないのですが良くもありませんでした。
著者の少年ものであれば、『今夜は眠れない』のほうが断然お薦めです。ファンタジー小説なら水野良『ロードス島戦記』をお薦めします。
終盤、一気に読めました
★★★☆☆
どんな事実も否定しないで、自分の中に収めて一歩進む勇気をもつこと、
それが大事ですね。
っと読み終わって感じました。
『ミツル』みたいに目標だけに向ってまっしぐらという人が多い世の中。
そのうち心が折れて疲れてしまうという事実も、どこか現代に通じるものを感じました。
勇気の物語は大人にだって必要だ
★★★★☆
朝日が昇るまで読んでしまった。で、眠れなくなった。
10歳の男の子の勇気(ブレイブ)の物語。
簡単に言えばファンタジー。
幻界(ビジョン)とよばれるロールプレイングゲームのような世界にわけあって入り込み、
目標に向かって旅をしていくなかで、成長して大人になっていくお話。
そこは差別や貧富の差、南北分断、宗教戦争…どこか現実の世界と似通った世界で、やさしさも憎しみも充満している。
そんなファンタジー、子どもが読むもんでしょ、ってかたずけてしまえばかたずけてしまえるんだけど。
かたずけられないから朝まで寝ずに読んでしまったわけで。
昔の童話のように、王子さまがやってきて、お姫さまを助け、めでたしめでたしとはいかないのだ。
主人公の男の子が、自分の弱さや、人を恨んだり妬んだりする心とも向き合っていかなくては物語が進まない。
仲間が傷ついたり、死んでしまったり、つらいことがどんどん起こる。
RPGのように教会で復活させてはくれない。
現世での自分の運命を変えるため、命をかけた旅をしながら、自分とも他人とも目をそらさず向き合っていかなくてはいけない。
なんと過酷な旅なんだろう。
大人なら、自分なら無理だ。
読んでいて、心が痛くなった。
お話の結末は予想どおり、少年が旅を経て成長して…というお決まりなのは読む前からなんとなくわかっていた。
なんたって「勇気の物語」なんだから。
ただ、後半ぐいぐいとこのお話にひっぱられたのは、「勇気の物語」はこどもだけではなく、
大人にだって、今だって必要なんだとわかったから。
RPGのように、ゲーマー(読者)によって、結末は同じでも違う物語になるのかもしれない。
この本を主人公と同じ小学生のころに読み、大人になってから読み返してみたかった、とかなわぬ思いを馳せてみる。