ボッカチオの原作を、イタリアを代表する鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニが映画化した1971年の作品。『カンタベリー物語』『アラビアンナイト』と並んで艶笑三部作、あるいは生の三部作と呼ばれる作品群の第一作でもある。原作から7つの挿話と、パゾリーニ自身が演じている画家ジョットの狂言廻し的なエピソードを繋げたオムニバス形式で、口がきけないふりをして修道院に住み込み尼僧たちに弄ばれる青年や、弟の妻と何度も寝て死んだものの姦淫は大した罪ではないと神に告げられる男など、宗教的モラルを根底におきつつもそれを逆手にとったかのような人間のたくましさを肯定していく、グロテスクかつ皮肉っぽいながらも美しく滑稽な物語がつづられていく。（田中　元）