著者のあたたかみの伝わってくる本
★★★★★
カエルはじめ両生類は、
水中と陸上の両方で生活できるような気の利いた動物ではなく、原則として、これら両方の環境がなければ生活できない、情けない動物
だからこそ、陸も水辺もこれ以上、汚染しないよう努め、カエルが育ちやすい環境を整え、カエルの減少・絶滅を防ごう、と著者は呼びかける。
ドイツやスイスでは、カエルの交通事故撲滅運動が広く行われている。カエルの繁殖期には減速運転して、カエルを轢かないようにしよう、というのである。
日本では、「カエル探偵団」なる組織が、カエル保護活動を行っているという。
カエルを守るため、私に出来ることはなにか? まずは、本書を紹介することからはじめよう。
研究史を淡々と記述する、無機質なスタイルではなく、自らが参加した調査・研究を軸としつつ、先人たちが行った研究の紹介、研究報告に対する批評等が織り込まれる、そんなスタイルを中心として本書は書かれている。
私は子供の頃からカエルや虫が好きで、いまも幼児期の延長のような生活を続けている。
最新の技術を使って、すばやく華々しい成果を挙げることには魅力があるだろう。しかし、私はやはり、実際に生きたカエルを自分で見つけ、また標本に触れてみて、それなりに納得したうえで、そうした仕事に取り組んで欲しいと思う。
そもそもカエルはなぜ、ジャンプするようになったのか。その答は、カエルが非常に平和的な動物だったから、というのが私の考えである。つまり、敵に襲われたら闘って身を守らず、ひたすら逃げるという習性がジャンプを生み出したと思われるのだ。
ユーモアを交えた文章は、本書の魅力だ。
私の一番好きなカエルといわれたら、躊躇なくガマ(ヒキガエル)と答える。「ガマを研究したから似た体形になったのか?」とか、「似た体形だからガマを研究するのか?」とか、口の悪い先生はおっしゃるが、自分の体形は関係ない。
南米にすむソバージュネコメガエル(略)も、木の上にすむが、とても変わっている。水分が逃げないように服を着てしまうのだ。といっても、本当に服を着るわけではない。
カエルの世界でも男女差別はいけないのか、子供を保護するのは雌だけではない。カエルのなかには、雄が保父さんになっているものもある。
意外な事実を知ることができた。
ヒキガエルはまた、ガマの油で有名である。ヒキガエルは敵に襲われると、跳びはねて逃げるかわりに、皮膚から毒液を分泌して身を守る。この毒液がいわゆるガマの油で、(略)粘り気のあるミルク状の白い物質である。(略)毒も少量なら薬になる。
〈ガマの油〉売り、なんて、胡散臭い、いんちき商売だと思っていたが、あながち、そうではなかったのだと知って、意外に思った。
そのほか、珍しい生態を持った日本のカエル・世界のカエルの紹介、カエルの祖先の話など、内容の幅は広い。気になった方は、手にとってご確認のほどを。
遠くなった身近な存在
★★★★☆
カエルを知らない人はいないだろう。カエルの子供はオタマジャクシであることも知らない人はいないと思う。しかし、あなたはカエルのことについてどれだけ知っているだろうか?このまえカエルを見たのはいつだろうか?
地球上で水辺から最初に上陸したのは、彼ら両生類であり、様々な環境に適応し、不思議な生活をするものもいる。そこには、あなたの知らないカエルの世界が広がっている。そして、ふと、身近にいたはずのカエルが見当たらなくなってきたことに気付く。それは最初に陸地に上陸した彼らの発する静かなメッセージ。カエル一つをとっても私たちの知らないことが沢山ある。
ゴライアスガエル
★★★★☆
ゴライアスガエルとは、世界最大のカエルで、体長が約350ミリメートル、つまり35センチもあります。そういった珍しいカエルがこの本では多く紹介されています。読んで損はないと思うので、ぜひ一度読んでみて下さい。