この強烈な新作で、ヘレンは再びミュージックPCを駆使し、伝統的なビートやリズムをキュズム風のデジタルな断片へと変ぼうさせつつ、セクシーなうなり声やしどろもどろな口調、空手チョップのようなヴォーカルを矢継ぎ早に繰り出す。このテクニックが高度なオリジナリティと少しばかりの前衛性をもったサウンドを生んでいるわけだが、リスナーを圧倒するリズムと言葉の切れ味は、ここでは流れるようなメロディーによってかなり和らげられている。その結果、知的な刺激と激しい縦ノリが同居したサウンドに仕上がった。
不穏な電子音が渦巻くエレクトロニカの世界とヒップ・ホップの世界を股にかけながら、ビートを埋もれさせないというあらわざをヘレンはまたしてもやってのけた。ヘレンが「自分らしさ」の塊であること、その「らしさ」を何としてでも皆に聴かせようとしていることが、これで明らかになった。(Paul Sullivan, Amazon.co.uk)