梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』の素晴らしさの検証と確認
★★★★☆
歴史学を学んだ者として、梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』と初めて出会ったときの衝撃はものすごいものがありました。世界歴史の発展過程の法則といいますか、その仕組みというものが見事に解明してあり、まるで手品の種を見せられたような鮮やかさを感じたものでした。最初に『中央公論』誌上に発表されたのが1957年2月ですので、すでに半世紀以上過ぎたことになります。
本書は、梅棹忠夫氏と『文明の生態史観』に影響を受けた学者との対談やコメントが綴られています。特に川勝平太早稲田大学教授の提唱する文明の海洋史観は、梅棹忠夫氏の論を補完するような役割を果たしています。それゆえ、全世界的にこの法則が認められるという証明のようなものでした。
具体的な内容としては、「文明の生態史観」の誕生と成長、対談日本文明の未来をかたる(梅棹忠夫・川勝平太)、対談「文明の生態史観」の今日的意義(梅棹忠夫・川勝平太)、梅棹生態史観と川勝海洋史観―四人の識者からのコメント、講演 海と日本文明という内容になっています。歴史に関心のない方でも抵抗なく読めますし、内容の面白さに引き込まれるはずです。
本書の24ページに書いてありますが、20世紀に書かれた本から心に残る本、後世に残したい本のアンケート調査で、司馬遼太郎『坂の上の雲』、西田幾多郎の『善の研究』、夏目漱石『我輩は猫である』についで、梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』が第4位に入ったそうです。それほど普遍的な内容を持った論考であったわけで、歴史の捉え方が50年以上支持されることに原著の魅力のほどが理解できると思います。