本書は西洋を中心とした世界各地における数の文化を解説したものだ。指を用いた計算法、算盤を用いた計算法、各種の数字、そしてどのようにインド数学が普及していったかという歴史の足跡について論じている。豊富な図版を使用し、当時の計算法や算盤の使用法から歴史的な背景、風俗にいたるまで詳細に解説しているのが特徴だ。中世に用いられた、指から体を使用して100万までの数を表す手法や、古代ギリシャやエトルリア、ローマ時代の算盤の使用法やそこで用いられた概念の解析は実に興味深く、またそれらにまつわる歴史的な、政治的な事柄もおもしろい。
各国の言語に残る単位をはじめ、数にまつわる単語に引き継がれた意味、あるいは民族の宗教的・文化的な側面から生じる種々のルールやタブーといった情報が当時の風俗や文化、政治的な状況までも生き生きと描きだしている。文化・歴史を愛好するならきっと知的好奇心を満足させることができるだろう。(斎藤牧人)