ピザレリはギタリストとして抜群のテクニシャンなので、ギターをフィーチャーしたボサノヴァ作品だって可能だが、本作ではギターは控えめ、あくまでも歌で勝負している。ドン・セベスキーのアレンジも素晴らしい。ブラジルのミュージシャンを多数加えているのは、ジョンの本物指向のあらわれ。ジョビンの曲はもちろん、ジェームス・テイラーやトニーニョ・オルタの曲も取り上げている。ボサノヴァでもやってみるかといったお手軽なものではなく、真剣に取り組んでいる姿勢が素晴らしい。もう1枚、ギター中心のボサノヴァ・アルバムを作ってくれたら、さらにうれしい。(市川正二)