ジーザス・クライスト=スーパースター 【ベスト・ライブラリー 1500円:ミュージカル&音楽映画特集】 [DVD]
価格: ¥1,500
アンドリュー・ロイド=ウェバーがオペラふうのミュージカルでブロードウェイに君臨する以前、ティム・ライスがディズニーのミュージカル・アニメに携わる以前、2人はミュージカル界の風雲児であり、共に作ったロックオペラ『ジーザス・クライスト・スーパースター』が彼らの名刺代わりだった。この映像作品(サントラCDはこちら)は、本作の監督であるゲイル・エドワーズの演出によって1999年に再演された舞台がもとになっており、古代のエルサレムではなく、現代のニューヨーク(壁は落書きだらけで、ジーザスの弟子たちはTシャツを着ている)と時間を超越したローマとを合わせた、いつとも知れない時代に設定されている。大がかりで抽象的な装置、虹色の照明、人目をひく衣装など、映画というより舞台を観ているようだが、ロイド=ウェバーとライスによるミュージカルですでに映像化されている『ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』同様、巨大なサウンドステージ(映画等の撮影を屋内で行うスタジオ)のおかげで、エドワーズ監督は舞台と映画を融合させる作品を思いどおりに作り上げている。
ファシズム、不寛容、革命といった要素を盛り込み、時代設定をずらし、定説となっている史実へのこだわりを捨て、作品に活力と鋭い洞察が加えられている。グレン・カーター演じるジーザス(カーターは2000年にブロードウェイで再演された際もジーザスを演じている)は「近頃あなたの言葉はどこかがおかしい」と恐れをあらわにするユダ(ジェローム・プラドン)に対して怒り、軽蔑するような眼差しを向けるものの、ユダの恐れが真実であることを否定できない。自分が伝える神の言葉よりも、自分自身が崇拝されてしまっていると気づき、人々の贖いのために自らが死ななければならないことを恐れ、苦悩し、やがて信仰と赦しの境地に達するジーザス(=イエス・キリスト)の姿を描いた本作は、これまであまり深く描かれなかった、より宗教的な側面を描き出している。
娯楽色が強く、かつ深い思想にあふれ、数々のミュージカル・ナンバーが楽しめる。エドワーズ監督は、1973年にノーマン・ジュイソンが監督し、重苦しく熱気に欠けていた同名の映画の二の舞を避け、躍動感あふれる編集、俯瞰するカメラワークによって話を展開させていき、全編にドラマチックで活気に満ちたナンバーを用いて、観客を作品の世界にいざなっている。(Sean Axmaker, Amazon.com)