好みによりますが……
★★★☆☆
『最後の封印(旧題ミュウ・ハンター)』に続く、近未来が舞台の今野敏
初期作品(旧題ガイア戦記)、待望の復刊である。前作よりもSF色がやや
薄れ、ジャンルとしては『ボディガード工藤兵悟』シリーズに近い、「傭兵
もの」に分類されるだろうか。
警察小説『隠蔽』での受賞以来、130冊を超すという今野作品が続々と
復刊されているのはファンにとって喜ばしい限り。武道(格闘技)・国際
謀略・伝奇(オカルト)など守備範囲は広汎で、各要素の組み合わせや
配合も実にさまざまで、これほど多くの作品をコンスタントに生み出し
ながら常に一定以上の娯楽を与えてくれる職人技には感心する。本作は
『秘拳水滸伝』スタートと同じ89年の出版だけに古さは否めないものの、
愛読者ならば『宇宙海兵隊ギガース』の萌芽を見いだしたり、
『マティーニに懺悔を』と重なる人物を発見したりと、興は尽きない。