決して忘れることのない人生の一瞬を決定づける歌がある。そうした歌はどんなに月日が経とうとも、初めて聴いたときのまわりの景色、音、それににおいさえも思い出させてくれる。バンド名を冠した本作からのセクシーで魅力的なシングル「Kiss Me」は、この歌に魅せられた多くのリスナーにとって、そうした歌の1曲になるかもしもしれない。この曲を生み出したバンドこそが、テキサス州中部出身でナッシュヴィルを拠点に活動する3人組シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーだ。グラミー賞にノミネートされた本作の他の楽曲でも、シックスペンスはアブラ・ムーアとサンデイズを溶け合わせたような軽快なサウンドを聴かせてくれる。そして、そのすばらしく表情豊かなサウンドを後押ししてるのが、リー・ナッシュの素朴なボーカル、マット・スローカムの才気あふれるソングライティング、デイル・ベイカーの堅実なリズムである。ジャーズ・オブ・クレイと同じくシックスペンスもまた、90年代後半のコンテンポラリー・クリスチャンミュージックのレベルを引き上げたのだ。（Michael Lyttle, Amazon.com）