ラヴィン・スプーンフルといえば、ウエストコースト・サウンドの脚注的な扱いを受けるバンドであり、音楽史から追い出されてしまった感すらある。しかし「Daydream」や「Summer In The City」に並ぶ堂々たるヒットは同年代に少ないし、今も1月を6月にできる（「君のソウルを自由に放つ魔法のことを話したい／だけどそれは知らない人にロックンロールを説明するようなものなんだ」）「Do You Believe In Magic?（魔法を信じるかい？）」に匹敵するような大ヒットは、歴史上そうあるものではない。ラヴィン・スプーンフルには、そろってモンキーズのオーディションを受けたという伝説がある。あの甘いサウンドと、温かいユーモアを明らかに備えた彼らなら、うまくやれただろう。だが、それは続かなかったに違いない。ソングライターでリーダーのジョン・セバスチャンは、意思と個性が強すぎる。ヒッピージェネレーションが将来親になったときのジレンマに思いをはせた「Younger Generation」のような曲での彼は、まるでアメリカのレイ・デイヴィスだ。『The Lovin' Spoonful - Greatest Hits』は、ずっと過小評価されてきたこの素晴らしいバンドを知る手始めに、最適な1枚だ。（Taylor Parkes, Amazon.co.uk）