Magic Time
価格: ¥1,024
カモミール・ティーの人間版のように、ヴァン・モリソンの歌声を聞くと、どんなにストレスを抱えた聞き手でも、たちどころに和んでしまう。つまり、彼の作品の中にはとてもメロウで、モリソンの魅力のひとつである60年代ソウルの影響を抑えたものもあると言うことだ。そうした要素は『Magic Time』にはない。グルーヴとなめらかさの素晴らしいバランス感覚。床から跳ね上がりたくなるような感覚がアルバム全体にはっきりとあふれている。
冒頭の「Stranded」からヴァンは飛びきりの優しい歌声を聞かせている。リラックスできて、いきいきと、喜びに満ちあふれて。2曲目の「Celtic New Year」ではまさに彗星のようで、このアルバムはこうした穏やかなままで突き進むのだと信じそうになり、そこに「Keep Mediocrity at Bay」でガツンとやられる。意欲満々のはしゃいだブルースで60年代、モリソンがまだ生意気なところを併せ持っていた最高のパフォーマンスを代表しているような曲だ。シナトラの騒々しいカバー、「This Love of Mine」、ペリー・コモの「I'm Confessin'」は極上の魅力にあふれている。プロデューサーとしてのモリソンは華々しいホーンセクションを選び、この音楽を良いものから偉大なものに引きあげている。クラシックなブルースとソウルを深く愛しているからこそ成せる技だ。彼は恋人であり戦士だったが(音楽業界に対する軽蔑を表した曲も2曲ある。「They Sold Me Out」と「Carry On Regardless」だ)、自分自身の音楽ビジョンはしっかりと貫いていた。古典になることが決まっているようなこのアルバムに、幅広い彼のファンは熱狂するだろう。(Denise Sheppard, Amazon.com)