淡々と常軌を逸している
★★★★★
長年成年誌で詩情とエログロの共存する個性的な作品を発表していた作者が、なんと青年誌でエロ・グロを控えめにし、一方の持ち味である豊かな奇想を展開させた佳作短編集です。
アステロイドベルトに住むロケット人間の子供を主人公とした表題作「クロとマルコ」はジュブナルとして直ぐ通用する可愛い作品ですが、その他も作者お得意の生物学的なSFガジェット(ゲノム融合〜遺伝子の水平伝播、遺伝子操作による草食恐竜の再生と畜肉化.e.t.c.)が大活躍しています。
中でも田舎のダムがある村で養殖されている人間そっくりの魚の話「湖のひみつ」と村おこしの為に草食恐竜丸ごとのハム化を計画する牧畜業の少女と恐竜の話「白い竜」が大変気に入りました。奇妙な出来事が登場人物の間では日常として受け入れられ、淡々と過ぎていく様子が素晴らしいです。
初めてこの作者を読まれる方にも推薦です。但し作者の他の18禁作品へ流れる時にはそちらも実に面白いのですが、充分ご注意下さい。