本作からのファーストシングルの「Feel」はフィル・コリンズやデヴィッド・グレイを思わせるアダルト志向のポップ・ソングである。けれども、ロビーの、世界最高のシンガーではないかもしれないが、心のこもった個性的なボーカルによって救われ、歌詞の一言一言に意味がこめられているのがわかるはずだ。また、本作のハイライトである雄大なバラード「Love Somebody」では、その声を限界までしぼりだし、重々しいストリングスと高揚感あるゴスペル合唱のバックサウンドにぴたりと乗せている。
まぎれもなく本作のバラードは圧倒的である。よりヘビーなロック・ナンバーは、オアシスを狙ったつもりがトップローダーに似てしまったような、派手なホーンセクションとパブ・ロック風のアレンジに満ちた、安っぽいソウルタッチですばらしく印象的に仕上げられている。
ロビーの歌詞の内容は、とてもパーソナルであり、ポップスターとしての苦労をくどくどとこぼしている(「How Peculiar」「Something Beautiful」)。また、円熟した新しいスタイルに合わせて自らのパロディーこそ少なくなったが、ユーモアのセンスと皮肉たっぷりのものの見方は「Handsome Man」やキャッチーだがばかげた「Me & My Monkey」で輝いている。大事なことをひとつ言い忘れたが、ロビーが初めてひとりで書き上げたエンディング曲「Nan's Song」は、亡くなった祖母へのシンプルで心揺さぶるトリビュートだ。これはまちがいなく本作で一番のナンバーではないが、おそらくロビーはほっとすることだろう。第一にこのナンバーが本作にうまくはまっていることに、第二にリアム・ギャラガーが初めて書いたナンバーより出来が良いことに。(Kim Hughes, Amazon.com)