本作では、メロディアスでポップなソングライティング・テクニック(テキサスの「I Don't Want A Lover」といったトラックでかつて見せた)よりもデビュー作『Space Between Us』の路線に近づき、劇的なオープニング曲「Ruthless Gravity」のアレンジで提示されるストリングスをベースにしたハーモニックなサウンドをもとに、官能的な音のメッセージを作り上げている。そして、統一感ある音楽によって一篇のシンフォニーのような感覚がもたらされているにもかかわらず、絶え間なく変化するムードが全編通じて興味を駆き立てつづける。雄大なオーケストラ風のトラックもまた、さまざまなタイプのヴォーカリストを選りすぐったことによって恩恵を受けている。まず最初に登場する元レモンヘッドのイヴァン・ダンドゥは、もの寂しくアコースティックな「Wake Up In New York」にメランコリックなヴォーカルを加えているが、すぐさま、モグワイのインド色の濃い魅力的で刺激的なトーンが、その陰鬱さを打ち消している。また、今や政治活動家と化したU2のフロントマン、ボノも平凡なトラック「Stay (Faraway, So Close)」でハイトーンのヴォーカルを聴かせてくれる。そして、本作で最も華やかで大げさな瞬間を迎える「Snow」には、デヴィッド・マッカルモントに参加してもらっている。
本作は、鼻につくような気取りがあるにもかかわらず、そして、オーケストラ風アンビエントによってやや無難にまとめ上げられているものの、つねに心地よさを感じさせてくれる。(Christopher Barrett, Amazon.co.uk)