第1章は有名なビュフォンの針についてである。これはよく知られている話題と侮っていたが、類書にないエピソードと視点があり、本書の著者が巧みな解説者であると感じられた。第2章と4章は、スポーツの連勝や連敗に関することだが、結末は、それぞれランダムウォークと無限級数の和である。第3章は、点と線から始まって、シュペルナーのレンマ(補題)という新しい話題が議論されている。第5章も点と線をつなぐグラフの話題であるが、応用例は携帯電話に行き着く。第6章は選挙の票の話題から始まり、光線の最短距離へと展開する。第7章は集合論と無限についてである。第8章では、単なる興味から始まった問題が、後に意外な応用につながった例を知る。
本書全体を通して、数学者の考え方とは、常識、注意深さ、柔軟さによって合理的な結論を導き出せる能力であることがわかる。本書は、小学生でも高学年ならば、本書の内容の大半を楽しめるだろう。数学者の合理的な考え方は、実生活においても随分と役に立つのではないだろうか。(村藤一雅)