大河ドラマでいえば総集編
★★★★★
源氏物語の筋を追い、これに注釈をつける形で構成したエッセイ。前から順に読んで行くと、源氏物語の梗概(但し「幻」まで)がわかるように作られている。流麗な文章で噛み砕いて書かれており非常にわかりやすいが、人物の血縁関係などの記述は少なめなので、これは入門書というよりは、むしろ通読歴のある人向けではないか、と思う。
私の知人で非常に詳しい人が瀬戸内源氏について、
あれは「女(の情念)」が出過ぎていて、男が読むには相応しくない
という意味のことを言っていたが、この作品を読むと確かにそうだろうと思う。世の女性がすべて寂聴氏と同じ考えであるはずはないけれど、紛れもなくこれは女性側から見た源氏である。どの女君を好むか、といった単純な話題についても、少なくとも私には理解しがたい溝が感じられた。
なお解説は、大きな違和感は持たないものの、私でも書きそうなことしか書かれておらず、何とも底が浅い。この人が新たな現代語訳を打診されたことがあるらしい、と聞いているけれど、それは余りにも度を超した暴挙であろう、と考えざるを得ない。
源氏物語のエッセンス凝縮文庫本
★★★★★
もしも「源氏物語」に興味を持ちながらも膨大な長さに恐れをなしているのなら、この本は是非とも読むべきでしょう。
かなり丹念に「源氏物語」の斜め読みができます。
あらすじは押さえられますし時代を超越したこの物語の魅力、平安時代の恋愛価値観、女性観人生観がよーくわかります。
紫式部の素顔を想像する部分や外国の女流作家のサイドストーリー「ユルスナールの花散里」に関する章も興味深いです。
これ読み終える頃には斜め読みでは足りず、ちょっと本腰入れて本編を、せめて現代語訳でもいってみようかという勇気が湧きます。
あるときは源氏を突き放して分析しあるときは面白がったり同情したりと、作者が付かず離れずなのがかえって読者が感情移入ができるような気がします。
寂聴版完訳にも興味は移ります。
この本を読んでから挑戦すればかなり味わい深いでしょうね。