本書は、そんな経験のある人が一から発音を学べる良書である。本書では、発音記号ごとに26の母音と24の子音が説明されており、カタカナによるふり仮名は補助的にしか使われていない。初めての人にも発音と記号をセットで学んでもらえるよう、目と耳と口をすべて使って学習できるように配慮されている。発音の仕方(あごをひいて、口を縦に開けて)や音のイメージ(口の奥でつまったように、遠くにいる人を呼ぶように)の説明とともに、発声時の口もとの写真も添えられており、視覚的に学べる工夫がなされている。また、基本単語が多く紹介されており、付属の2枚組CDを使って、自分の発音と聞き比べながら発音練習ができるようになっている。たとえば日本語の「ア」に近い音は、長母音・短母音を含めて8つぐらいの音があげられている。日本人は「hurt(痛む)」と「 heart(心)」、「luck(運)」と 「lack(欠乏)」をどちらも同じ「ハート」、「ラック」と発音してしまう傾向にあるが、日本人が区別しにくいそんな音の微妙な違いがわかりやすく説明されている。また同様に、つづり字と発音のルールも丁寧に解説されているので、初めての単語や発音問題にも、自信を持って取り組めるようになるだろう。(久保はるか)