甘美なる破滅
★★★★☆
最近巷間に流布しているボーイズラブとは大きく異なる傾向の作品です。
SF、オカルト、殺し屋、戦争などボーイズラブでは、あまり取り扱われない世界を舞台として繰り広げられる男達の精神的なつながりが描かれています。「地獄への道は善意で舗装されている」といいますが、全ての短編の結末が破滅的でなおかつ甘美な匂いを漂わせているのです。物語冒頭から退廃的な空気が流れ、破滅へ向かっていくであろうことが読者にひたひたと伝わってきます。そして予想通り決してハッピーエンドとはいえません。いずれの物語の主人公も純粋にパートナーを求め、恋人を求め、自分の意義を求め、その動機は純粋です。しかし結末は悲劇的、なのにもかかわらず、私にうらやましいと思わせる甘美な破滅の結末です。
絵が美しく、人物もしっかり書き分けられています。この方ほどオヤジを美しく書ける方はなかなかいないのではないでしょうか。老教授でさえ美しいと思えてしまいました。SFやオカルト的なシーンは、ともすれば嘘っぽくなってしまうのですが、すべて架空のものでもしっかりとしたデッサンで存在感を持って描かれています。セリフがないコマの語る余韻にひたれるすばらしい画力です。
まだコミックスは少ないようなので、今後の短編にも大いに期待いたします。