ハードSF × ヒューマンインタレスト
★★★★★
ジャンプの連載にも耐えるおもしろさの質と、リアリティーのある登場人物たち。
この作品で、主人公(たち)はある種の魔法が使えます。
それは、言霊的に言葉の力によって対象者を操るモノと
道具を触媒にして自然の力を呼び起こすモノの二つにわけられそうです。
三宅乱丈さんのことですから、この性質の違う魔法を出したのには何かありそうですが、それはちょっとおいておいて…
一つ目の相手を操る力のために(にもかかわらず)、主人公=デュルクは相手に心を開くことのできない描写がこの巻でありました。
本音でしゃべらないから他人(村人)にも信用されません。
”信じる”ということもテーマかなと感じた八巻でした。
まだまだ書きたいことはあるのですが、デュルクの醜くふくれあがった足も新しいドアを開く、鍵になっている予感。
ディテールまで楽しめる!
★★★★★
逃亡から数年、大陸を放浪するデュルク。その母なる星ルーンは、かつての軍事系から呪師系へと権力支配が変わり、あからさまな民族浄化が始まっていました。
大陸の深奥に暮らす「守りのイムリ」たちもついに、近隣の血を分けたイムリ集落とともに滅亡の危機を迎えます。
イムリの家族の情愛に満ちたドラマの対極に、双子デュルクへの憎悪に狂ったミューバ、そしてデュガロ大師の腹心、怜悧なガラナダ、と、それぞれの豊かな個性が実に見事に描き分けられていて、今回もはらはらさせられる展開。
呪師系の新しいコスチュームや、細かなデザイニングを観察する楽しみもある「イムリ」。もう8巻目なのか、それとも「まだ」8巻目なのでしょうか?
マージの地下で凍っているイムリの戦士、そして母ピアジュが予見したデュルクとイムリ蜂起の夢。数々の伏線に「三宅さん、待ってるから頑張ってどんどん書いて!」と声援を送りたくなります。
「無邪気な表紙に反して非情な展開」
★★★★★
古代から伝わるイムリの秘具により超常の力を身につけ、自分の出生の秘密からカーマの冷酷な支配システムを知ってしまった主人公デュルクは逃亡と隠遁の道を取りますが、旅の途中、少女チムリを救った事により、カーマによる民族浄化に瀕しているイムリの村人達と関わらざる得なくなります。
この巻の苦悩を通してデュルクがどう闘士・指導者として成長するかが今後の興味となります。
それにしてもカーマの取る獣奴を使用してのイムリ淘汰は、獣奴の由来を知っている者ならその酷さに吐き気を催す程の冷酷さです。
そのカーマに騙されて育ったデュルクの双子の片割れ、ミューバの再登場シーンは、前巻から経過した数年間で如何にこの人物が退廃屈折したかを見事に描写しており、鳥肌が立ちました。こんなに病んだ恐ろしい女装子は他に類を観ません。
テーマ的には、言葉の持つ力を隠喩とした超能力と人の進化、惑星のエコロジカルな面の描写等、SFの名作「デューン」シリーズに一番近い作品ですが、過去これだけ多岐にわたるテーマを見事に長編漫画化した例はあまり無いと思います。正直、初めてこの巻から読む方には取っ付き難いと思います。是非とも第一巻からじっくりお読みになる事をお薦め致します。
単行本は連載中のカラーページをセンターカラーで再現しています。