ニューヨークのリトル・イタリーに住むイタリア系アメリカ人J.R.（ハーヴェイ・カイテル）は、フェリーの上で知り合った女性（ジーナ・ビートゥン）に強く心引かれながらも、階級的コンプレックスを抱いているがゆえに、なかなか告白することができない。しかし、彼女にも実は誰にも言えない秘密があり…。
   マーティン・スコセッシ監督の記念すべき長編劇場用映画デビュー作。ドキュメンタリー・タッチで日常の孤独を切々と追い続けていく彼の世界観は、ここでもうすでに濃厚であり、モノクロームの映像がそこにさらなるリアリティを与えている。H・カイテルは本作が映画初出演。以後、彼はスコセッシの分身的存在として欠かせない個性派俳優の道を歩んでいくことにもなる。（的田也寸志）