さて、この自選集、当時の読者である私が読むに、彼女のキャラクターの真骨頂は、「ほのかに眠い昼下がり」の<ロリカ>の花園さんと(P228)「涙のストローハット」の央子ちゃん(P303)にあるのではないかと思う。 特に花園さんの肉感性というのは、女性が女性を描写したことによる、その柔らかさが図らずも出て、大人になった私の奥所に触れるものが、今でもある。それは、過去もそうだったろうし、今後もきっとそうだろう。
彼女のホームは北九州だ。191Pの観覧車、あれは小倉のものではないか。本物を見たときに強くそう感じた。
文庫として、今、読んでも当時と本質的な変わりはない。温故知新。今の少女漫画しか知らないなら、読んで損はないと思う。
「流れ星パラダイス」「陽気なブルー・カナリア」「月のベンチで待っているから」「土曜の午後のチアフル・ティアフル」
「ほのかに眠い昼下がり」「AHCHOO GIRLS」「涙のストロー・ハット」
どの作品も、未だに現代の少女・女性に通じるものを持っている。
ほのかに光る、懐かしい少女時代の「恋」への憧れめいた物を思い出させてくれる。
当時、陸奥作品を好きだった大人の女性に。
そして、現在の過激傾向が高くなってきた少女漫画に付き合いがたいものを感じる少女に、読んでみて欲しい一冊。