流石に毎回、単行本の度に楽しませてくれる『魔のおまけ』では
盟友メチクロ氏がカラー原稿部分でサポートに入っているものの
相変わらずのおまけの枠を超えた描き降ろしサイドストーリーが
併録され誌面で本編を読んでいる人も楽しめる内容となっている
また本編では二巻・三巻での大幅な干渉の後、
今回はホール側と魔法使いの世界側の物語は併走し
堆く積み上げられた謎はまた新たな謎を生み出すのだが
のんびり野球なんかをやりつつ徐々に謎解きへと移行し始める
今回メインキャラの一人『心』の背景が少し明かされる訳だが
この作品、作者の意図でもあるのだろうが悪者が一人も居ないのである
その役割を担うべき煙ファミリーの面々はストーリーの殆ど半分づつを
主人公側と分け合っている上に主人公サイドより健全に見える
その事はこれからの展開に大きな影響を及ぼしそうではあるし
一方で完全な謎に包まれたままの十字目のグループと良い
独特の俯瞰を用いたストーリーテリングの才能は、
作者が絵が巧いだけではない事を物語っている
つまり近年、絵が巧いと言う事だけでストーリーがねぇと言う
漫画家が多い中で珍しく『林田球』は貴重な存在であり
スプラッタやバイオレンスを毛嫌いしている人も居るだろうが
この作品はそう言った言葉で一括りに出来る物ではない
あながち月間ikkiの冠した『軟弱なファンタジーに冷や水を』の
煽り文句は間違っていなかったのかもしれない