思春期の少年たちが抱える悩みを描いた表題作のほか、不妊症で悩んでいた妻が連続レイプ犯に犯され妊娠、その赤ん坊を産むことに決めた彼女に対する夫の心の動きを描いた「狼男の息子」、そして考古学者が調査に訪れた町で出くわした恐ろしい体験をつづった怪奇小説「暗黒製造工場で」など短篇9篇を収録。
著者は『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』で、2001年度のピューリッツァー賞フィクション部門を受賞、マイケル・ダグラス主演で映画化された『ワンダー・ボーイズ』などでも知られるマイケル・シェイボン。本作品は短篇集第2作となる。現代のどの家庭にもありそうな、どこかぎこちない家族関係をどうにかして修復しようと試みる悩める人たち。そんな彼らを、ときには温かく、ときには辛辣に描いている。
「狼男の息子」で、冷えきった夫婦仲を元に戻すきっかけを作ったのがレイプ犯であること。出産が遅れている妻に、夫の威厳をなくしていた彼が行った「処置」。そして出産後、赤ちゃんを交え親子3人を看護婦がカメラに収めるシーン。著者の毒のある独特の発想とストーリーには、社会に対するアイロニーが多分に含まれている。(石井和人)