人は誰でも、自分の中に隠された部分を持っている。それは、家族や社会から提示される理想の自我像にはそぐわないものとして、抑圧され、意識下に押し込められている。心理学者はそれをさまざまに名づけてきた。「影」「他我」「下層の自己」「暗い双子」「抑圧された自己」「イド」。しかし、この「影」に向き合うことこそが必要なのだ。著者であるデビー・フォードはそう提言する。
自分には欠点がある。自分には価値がない。「影」が発するこのメッセージを人は認めようとしない。しかし、自分の「影」を白日の下にさらして、自分の欠点だと思い込んでいたことを長所として捉え受け入れることで、本当の自分への扉を開け、より大きな世界を生きることができるのである。
「影」をさらけ出す第一のステップが、「投影」(=自分の一面を他人に転嫁して否定すること)している自分の「影」と向き合うことだ。あの人は意地悪だから我慢ならない。そう思っている自分は「あなたは意地悪だ」と言われてひどく傷つくのではないだろうか。「どうしてわかったのだろうか?」と。
しかし、「意地悪で得することは何だろう?」と考えてみてはどうだろう。最初は受け入れるのに時間がかかるだろうが、やがては意地悪な自分に振り回されるのではなく、うまく利用できるようになるだろう。
著者は、10代のころは依存症に悩み、それを克服し、現在は自分の「影」と向き合うセミナーの指導にあたっている。章ごとに登場する、自分自身の影と向き合うための9つのエクササイズは、さまざまな症例をもとに開発されており懇切丁寧だ。
原題は『The Dark Side of the Light Chasers : Reclaiming Your Power, Creativity, Brilliance, and Dreams』。重苦しい不安を抱えて生きる現代人の多くの支持を集め、アメリカではロングセラーとなっている。(篠田なぎさ)