それぞれのネットワーク機器がどのように働いているのか、動作の詳細を解説することはもちろん、本書はそれらの技術の背後にある理念や発想、概念といった部分にも重点をおいて解説をしているのが特徴である。すでにあまり使われなくなったプロトコル群などもその背後にある発想や概念を学ぶために用意されているなど、単なる技術の解説書というよりは学習書、教科書的要素の強いつくりになっている。著者がプロトコルの標準化やルータ、ブリッジ等の分野におけるクリエイターであることから、全体にわたってプロトコル、ネットワーク機器の考え方が豊富に示されている。たとえばルータやブリッジの解説では「このような機能を持っている」というような断定的あるいは一方的な説明をせずに、コンピュータネットワークにおいて発生した問題をはじめに提示し、それらを解決する手法を通してネットワーク機器に必要な機能を解説していくスタイルをとっているので技術的な背景について深い理解を得ることができる。さらに経路制御アルゴリズムの考え方、プロトコル設計の心得といった章が用意されているので、製品開発者には大いに参考になるだろう。
付録として用語集が収録されているが、読み進めるうえではある程度のコンピュータの基礎知識が必要である。ルータ、スイッチ等のネットワーク機器を触った経験があればさらに理解は深まるだろう。ネットワークについて深く学ぼうとする学生や技術者の方には最適の1冊。(斎藤牧人)