ダグ・E・フレッシュ「La Di Da Di」のラップバージョンで伝説的地位を得た後、世界のファンがイギリス出身のウォルターズに夢中になるのは時間の問題だった。フレッシュの曲「The Show」で、 リックはすでに過激なストーリーテラーを自任している(それも第一級の名手)。「グレイト・アドベンチャー Great Adventures」はスリック・リックの短編小説となった。彼らは一面的な観点に満足せず、タグを組んでのライミングも多い(「Mona Lisa」、「Teacher Teacher」)。出来としては、気まぐれなもの(「Treat Her Like a Prostitute」「Indian Girl」)より、訓戒的なもの(「Hey Young World」、「Children's Story」「Teenage Love」)のほうがいいが、「The Moment I Feared」「Children's Story」 や「Mona Lisa」で聴かれる複雑なリズム、シナリオのうまさは、音楽のプロじゃなくてもわかるはずだ。イギリスなまりも彼らしさを引き立てている。これに続くアルバムはいまいちだし、服役歴もあるスリック・リックだが、Bボーイの不可欠な記録としてのこのアルバムを残した彼の名は記憶に残るだろう。