バブルに埋もれた名作
★★★★★
この本は昭和初期の「金融恐慌」という大事件がどのようなものであり、1929年のウォール街の大暴落を端緒とする「世界恐慌」が、なぜ、どんな理由で発生し、人々がどう右往左往し、その大津波が世界にどう波及していったかを描いている。それに現下の経済事情が1929年当時のそれに近似しつつあり、大恐慌が再びやってくるのではないかという不安を示唆して終わる。マンガとはいえ単なる経済の解説書では面白くないので、現代を生きる二人の男女を登場させて話にいろどりを添える。
著者49歳で脂の乗り切った頃の作品で、当時全スタッフ総出でスケジュールも超強行軍で書き上げたと。この後、大恐慌どころかバブル景気の出現でこの本が注目されることはなかったが、内容はわかりやすくて詳しいところまで解説してあり、今読んでも十分通用する。石ノ森ファンでなくても経済史、昭和史に興味がある方なら一読をおすすめする。