ありそうでありえない
★★★★★
田舎の旧家に嫁いだ、男を知らぬ彩子は旧家に伝わる掟によって、初夜、衆人環視の中、夫ではない男によって女にされます。そして、拒絶や逃亡を企てますが、やがて女の歓びを知るようになるという、全体的には調教(縄と平手によるスパンキング)と旧家の因習を絡めた、ポルノグラフィ―ではない、真の官能小説です。初めから終わりまで熱い、それでいて静謐な雰囲気が漂っています。
この作者は和服や和の美を描くことに卓越しており、本作品でもその能力は存分に発揮されています。
村全体で、特定の家を重んじ、また何らかの掟が現代にも伝わってきているという設定は、テクモのゲーム「零 紅い蝶」を彷彿とさせます。「紅い蝶」では双子の一方が他方を絞殺することによって、村は大災厄から守られるという設定です。『新妻』ではその時の村の主が新妻の処女を奪い、女にしていくことによって村全体が守られ、繁栄していくという考えが貫かれています。民俗学的には興味深い事例です。
時代が進んでも、こんな風習のある村があるのかもしれない、そんな気にさせられる書き方がされており、こんな村に住んでみたいと思わされました。