ヘルメットがいなかったら、ニュー・メタルというジャンル自体も生まれることはなかっただろう。ペイジ・ハミルトンのノイジーで耳をつんざくようなギター、ジョン・スタニアーの散弾銃のようなすさまじいドラミング、ヘンリー・ボグダンのダーティーでアクの強いベース…。これらに触発されて、ゴッドスマック、パンテラ、リンキン・パーク、システム・オブ・ア・ダウンといったバンドや、多くのニュー・メタル勢が活動を開始したのである。ニューヨークを活動拠点としたヘルメットは、ジャズの感覚とハードコアを融合させたバンドの先駆け的な存在だった。ゴリゴリに強烈なリフとエレガントに崩したリズム、充分に磨き上げた驚くほど繊細な歌詞の組み合わせは、彼らの名をロック史に刻みつけた。ダークな哲学的アンビエント「Unsung」、幽玄な光景が浮かび上がる「Wilma's Rainbow」には、ヘルメットの手法がよく表れている。6年にも及ぶ彼らの活動が過小評価されているのは悲しいことだ。このメタル界の融合主義者たちは、独自の領域を切り開いた。彼らが1997年に楽器を捨てた後、その領域に足を踏み入れたグループはひとつもない。
21トラックを収録した本作は、デジタル・リマスターによってあの栄光の日々をよみがえらせ、ヘルメットの革新性をまざまざと示している。ジミヘン風の堂々たる「Bad Mood」から、まさしく天才的な「Just Another Victim」(映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラック収録曲で、ハウス・オブ・ペインをフィーチャーしてラップとの結合が試みられている)まで、内容充実。ヘヴィ・メタルに名誉と待望久しかった新機軸をもたらしたバンド、それがヘルメットなのだ。(Jaan Uhelszki, Amazon.com)